ローアンは抱えていたルウナをそっと下ろし、バリアンからの書状を持ち直すと、急に真剣な面持ちとなった。
「………ルウナ、母は少し大事な仕事が出来てしまった。……遊んでやれなくてすまないな」
一国の頂点に立つ女王には、暇など無い。
特に今は多忙だ。
息子に全く構ってやれないことに、母親としては酷く情けない気持ちになるが………当のルウナは気にしていない様だ。
「はーい!!母上、頑張って下さ―い!僕はルアと遊ぶから!!」
……傍らで、ビクリと震えたルア。
聖獣ネオマニーである気品あるルアも、ルウナ相手には、げんなりとしている。
ローアンはそれを知ってか知らずか、完全放置だ。
「母上―、トゥラは何処ですきゃ―?」
「トゥラなら“闇溶け”で私の影の中にいる。…出て来たくないようだな」
苦笑するローアン。その彼女の影を、ルアは恨めしそうにジッと凝視する。
―――………ルウナ様がお呼びよ、貴方……出て来なさいよ。
―――嫌だ。子供のお守りは御免被る。
―――………薄情者!!
二匹の間でそんな会話があったり無かったり。
「………さて、忙しくなるな。………書状は謁見の間で読む。………どうせ、許可する、という様な内容だろうがな」
ふん、と鼻で笑い、筒状の書状を階段の手摺にバシバシと軽く叩き付けた。
「………ところで…ダリル。………例の件はどうなった?」
鋭い眼光をちらりとダリルに向けると、相変わらずの無表情で彼は頷いた。
「―――…言われた通り、やっておきました」
「………あの………………何のお話で…」
一人、理解できてないアレクセイ。


