亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


髪の先と睫毛が、薄く凍り付いていくのが見えた。


…寒い。……冷たい。


…あまりの寒さは、防寒着である筈のマントを直ぐさま役立たずにしてしまった。
実体の無い冷気が、鋭利な刃物の様に全身を切り付ける。
異常な寒さが、痛い。

熱が欲しい、と身体が悲鳴をあげる。






ここは密室なのに。
正面から吹いてきた冷たい無口な風が、レトの身体を撫でていった。

レトの身体は、ピクリとも動かない。
寒さで動けない訳ではない。





「ねぇ、レト。……僕は、どうしたらいいと思う?」

前方に佇むユノを中心に、ブワッ…と小さな吹雪が舞い上がる。
彼の足元から、青白い氷が開花する花びらの様に広がっていく。

亀裂が生じる。その上に氷が張る。また亀裂が生じる。そして氷が…。

その止まらないサイクルが、ゆっくりと静かに進行し……彼の美しい領地と砦を形作っていく。

それは綺麗なのに。


恐ろしい。





以前敵の襲撃で見た時の、ユノの白の魔術の暴発によく似ているけれど………今目の当たりにしているそれは、あの時よりも遥かに強大だ。


吹雪の竜巻の真ん中にいるユノの姿が、霞んでよく見えない。
だが、その赤い瞳の輝きだけは、この世界にとてもよく映えていた。



「…君は…君は………………僕を、王にしてくれるって………言ったね?………僕を守ってくれるって…言ったよね?」


無音の吹雪の中。

ユノの不気味な笑みを含んだ途切れ途切れの声が、真っ直ぐレトに突き刺さる。


「……王にしてくれるんだろう…?…それなら君は……何をしてくれるんだい?………………僕を王にするんだろう?………僕を…………王に…王に……………王に、してくれよ……………ああ、もう……どうしてなんだろう…」














どうしていつもいつも、僕は嫌な思いをしなければならないのだろう。


どうして不愉快にならないといけないのだろう。


どうして…皆。







「―――僕の…邪魔をするんだい…」