亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



それは友である筈なのに。

生まれて初めての、大切な、大切な、親友である筈なのに。





彼の眼差しが、怖い。


彼の眼差しが、レトを縛り付けている。





それはもう、射抜く勢いで。











…二人の距離は、一向に縮まらない。どちらかが近付く気配も無い。
空いている互いのこの距離は、遠い訳でもなく、近い訳でもなく。

とても、息苦しい。
二人の、二人だけの奇妙な空間が、そこにはある。




馬鹿みたいに、何度も何度も息を呑む。
久しぶりに瞬きをすれば、冷え切った涙の膜が瞼と睫毛を濡らす。
冷たくて、思わず涙をもう一滴零した。

目尻から溢れた涙は、生温かった。













「………………僕………僕じゃ………ないよ…」

なけなしの勇気を振り絞り、声になっているかも判別し辛い様な短い言葉を漏らす。

今はただ、それしか言えない。
他に言葉が見付からない。
自分でも何が言いたいのか分からない。



「………違う…ち…違う、から………」


微かに首を左右に振りながら、肩を震わせながら、レトは『違う』と繰り返す。

半分泣いているレトの声が、無駄に広いこの謁見の間の至る所にさ迷い、虚しく響き渡っていく。

思い切って前に一歩踏み出した乾いた靴音が、その声に続く。





「………違う……僕は…」

マントの裾を掴んだ両手の拳が、小刻みに震える。

「…僕………僕は……ただ…………僕、は…」

しゃくりあげてしまいそうになるのを堪えて、レトは再度口を開く。







「………………違う、から…」






「ああそうさ、君は違うよレト。君が違うのは当たり前じゃないか」













感情など感じられない、しかし心なしか尖ったユノの声にビクリと肩を震わせた。

声は笑っているのに。

彼は、笑ってなどいない。





少しも、その目は笑みを浮かべてなどいない。