それは友である筈なのに。
生まれて初めての、大切な、大切な、親友である筈なのに。
彼の眼差しが、怖い。
彼の眼差しが、レトを縛り付けている。
それはもう、射抜く勢いで。
…二人の距離は、一向に縮まらない。どちらかが近付く気配も無い。
空いている互いのこの距離は、遠い訳でもなく、近い訳でもなく。
とても、息苦しい。
二人の、二人だけの奇妙な空間が、そこにはある。
馬鹿みたいに、何度も何度も息を呑む。
久しぶりに瞬きをすれば、冷え切った涙の膜が瞼と睫毛を濡らす。
冷たくて、思わず涙をもう一滴零した。
目尻から溢れた涙は、生温かった。
「………………僕………僕じゃ………ないよ…」
なけなしの勇気を振り絞り、声になっているかも判別し辛い様な短い言葉を漏らす。
今はただ、それしか言えない。
他に言葉が見付からない。
自分でも何が言いたいのか分からない。
「………違う…ち…違う、から………」
微かに首を左右に振りながら、肩を震わせながら、レトは『違う』と繰り返す。
半分泣いているレトの声が、無駄に広いこの謁見の間の至る所にさ迷い、虚しく響き渡っていく。
思い切って前に一歩踏み出した乾いた靴音が、その声に続く。
「………違う……僕は…」
マントの裾を掴んだ両手の拳が、小刻みに震える。
「…僕………僕は……ただ…………僕、は…」
しゃくりあげてしまいそうになるのを堪えて、レトは再度口を開く。
「………………違う、から…」
「ああそうさ、君は違うよレト。君が違うのは当たり前じゃないか」
感情など感じられない、しかし心なしか尖ったユノの声にビクリと肩を震わせた。
声は笑っているのに。
彼は、笑ってなどいない。
少しも、その目は笑みを浮かべてなどいない。


