亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~










ルビーよりも透き通り、鮮血よりも生々しく、湖よりも深い。


そんな赤色。













それは惚れ惚れするくらい綺麗なのに。

いざ前にすれば、そのあまりの神々しさに尻込みしてしまう程、気高くて。
なんだか少しだけ、怖くて。




本当は、見てはいけないのかもしれない。

僕なんかが見ては、いけないんだ。



見られても、駄目なんだ。











あの赤い瞳が、僕を映している。

ただ、僕だけを。







まるで血塗れになっているかの様な真っ赤な僕が、見える。

見ている。

見られている。







…違う。






違うよ。






違うんだ。


ねぇ、ユノ。




僕は。




















「―――………僕は、違うよ…」




ようやく搾り出した声は、これが本当に自分声なのかと疑いたくなる程か細く、情けない程に弱々しく震えていて………声は、泣いていた。

ただ、彼に見られているだけだというのに…身体を襲うこの異常なまでの緊張感と、寒気は…何なのだろうか。

分からないから、怖い。
怖いから……動けない。

何かが、怖い。

………僕は、何が怖い?



普通に呼吸をするのもままならない。空気を吸っているのに、何故か酸素が足りない様に思えた。口から吐き出す息は、重りをぶら下げているみたいに酷く重かった。



ピシリと張り詰めた、冷たい空気。


自分の乱れた吐息と、やけにうるさく高鳴る鼓動だけが聞こえるだけで、あとは何も無い。

瞬きをするのも、怖い。

限られた視界に映るのは、奥にある古びた玉座と階段。
冷たい大理石の床。
美しい模様が描かれた七色のステンドグラス。

……だが、レトの目は…その中の中央…視界の真ん中に佇む一人の少年しか見ていなかった。







見慣れた姿。綺麗な顔。大きく開かれたつぶらな瞳。

真っ赤な、瞳。

濃い赤が揺らめく、瞳。