亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




「―――…つ………めっ…」

誰にも聞き取れないくらいの小さな声を、ジンは呟き続ける。



首を刎ねた獣の巨体に、回し蹴りを放つ。踵に仕込んだ刃が首無しの胴体に食い込み、蹴りの勢いをそのままに獣の集団に向かって放り投げる。

鞭を右左の手で素早く交互に持ち替え、広範囲に鋭い旋風を巻き起こす。

“闇溶け”の応用技である道具のみの移動を使い、遠くの見えない範囲に向かって鞭を放ち、クナイを投下した。


「―――めっ……つ……っつ…」

…隻眼の踊り子は一心不乱に、ただ舞い続ける。その口は相変わらず何かを呟くばかりだ。

溢れんばかりの犬を次々に血祭りにあげる中で、この国では白の主と呼ばれる大蛇が数匹、突然地中から姿を現した。
成長期に当たるまだまだ子供の蛇だったが、巨大であることには変わりない。
数匹のブロッディをその巨体で潰しながら接近してくる大蛇を横目で捉えると、ジンは一本のクナイを何処か狙いを定める訳でもなく、無造作に投げた。

…直後、一瞬で闇を纏ったクナイは空中で姿形を眩ましたかと思うと……次の瞬間には、大きく口を開いて距離を詰めてきていた大蛇の舌を、貫いた。

たった一本のクナイで縫い針の様に凍った大地に縫い付けられた大蛇の前進は、ジンまでの距離が僅かな所で止まってしまった。

目の前で呻き声を上げる蛇に対し、ジンは一瞬の躊躇いも無く………巨大な上顎を、蹴り上げた。

…それはよほど強力な蹴りだったのだろう。
…ゴキン、という鈍い音と共に蛇の顎の間接が外れたかと思うと、被害はそれだけに止まらず、そのままの勢いで上顎は有り得ない方向…真後ろに折れた。
最初から裂けていた口が更に裂け、上下の顎は百八十度開いてしまった。無論、即死である。




狙うのは全て、頭、心臓、首………急所だけ。



命を一つ、また一つ。
もう一つ。
一つ、一つ、一つ。







ただ奪って。

奪って。


それが、使命だから。

村の使命。
戦いにおける戦士としての、守るべき事は………この短き言の葉だけ。












「―――つ…滅殺…滅殺…滅殺…」