小さな手足を元気良く振りながら、満面の笑みを浮かべてローアンの元に駆け寄って行った。
広間に少年の甲高い声が響き渡る。
「………母上ぇ――!!」
遅いとも速いとも言えない足取りで、我が母を求めてタタタッ、と走り寄って来る様は実に微笑ましい光景。
ローアンは微笑を浮かべて、走って来る我が子を受け止める様に少しだけ屈んだ。
「………ルウナ…」
愛息子のルウナの伸ばした両手がローアンに触れ、ローアンの手は小さな身体を抱き締めようとしていた。
……と、誰もが想像するシーンが今ここで現実になるであろうと思われた…瞬間。
…ローアンの片手は。
―――目にも止まらぬ速さで、ルウナの頭を掴んだ。
ガシッと頭を鷲掴みされたルウナの笑顔はローアンの手の平に隠され、それ以上前に進めないルウナは、ピタリと動きを止めた。
………まさかこんな図柄になるとは思ってもみなかったアレクセイは、ローアンの背後でブルブルと震えていた。
ダリルはぼんやりと見下ろしているのみで、これといって反応らしい反応は皆無だった。
ローアンは柔らかな笑みを浮かべて、その状態のまま、優しくルウナに囁いた。
「…ルウナ、廊下は走ってはいけないと言った筈でしょう?………何度言ったら良いのかしら?………………………分かったら、返事」
語尾の辺りがドスの利いた低音だった気がしたが、多分幻聴だろう。
笑顔で叱るローアンの姿は、誰もが恐れおののく。


