トクン、トクン、という。
父の優しい鼓動。
胸に顔を埋めているから、その音はとても近くに感じられて。
それが、鳴らなくなって。
同時に、何故か涙も急に引っ込んでしまって。
父の胸に頭を寝かせたまま、何度か瞬きをして。
厚みを増していく、白い大地をぼんやりと見詰めた。
ああ、神様……何故ですか。
何故、僕らを引き離すのですか。
すっかり動かなくなって、すっかり冷たくなった父さんの傍から、僕は、離れたくなくて。
呼んでみたら、また、レトって…父さんが僕を呼んでくれる気がした。
だから僕は、譫言の様に、囁いた。
ねぇ、父さん。
僕の声、聞こえてる?
「父さん」
「父さん」
「父さん」
「父さん」
「父さん」
「父さん」
「父さん」
「父さん」
「―――…お休みなさい」


