亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~





―――…しばしの沈黙が、流れた。





身体を寄せ合う互いの距離はほとんど零に等しいのに、言葉の無い静寂ばかりが漂い続けていた。

ただ、父の口から漏れる嗚咽だけが、聞こえる。


胸に抱きしめられたままだったレトはその間、父の声に全身全霊で耳を傾けるために、目を閉ざしていたが。








やがて、瞼を開き。


ゆっくりと、顔を上げて。





























「―――………………………僕、知ってたよ…」
























沈黙を破ったその呟きに、ザイのしゃくり声が一瞬、止まった。

ザイは目元を覆っていた手を外し、胸に抱きしめている我が子に顔を向けた。

この目はもう、何も見えない。光も闇も、何が何なのか、最早分からない。





だが、確かに、見えるのだ。









流れ出る涙も拭わず、鼻水をだらし無く垂らして、情けない程ボロボロに泣き崩れる……レトの顔が。




















「…っ………ぼ…僕っ……僕ねっ……し…知ってたんだよ。…………小さい頃…父さん…っと…コム爺が話していたのを………僕…僕ね、き…聞いた…んだ……。……………聞いちゃった事………ずっと…隠してた………………ご、ごめ………ごめんなさい……………………隠してて…ごめ、んなさい………」



…そう言って、今度はレトが泣き喚き出した。

ごめんなさい、ごめんなさい、と繰り返す我が子の声を聞きながら………ザイは、涙を流したまま、薄く微笑んだ。














全く。




変なところが、私とこの子は似ている。

何と言おうと、やはり、親子なのか。







この子は、やはり、私の子なのか。


そして、この子は………醜い私を知っていながら…。