何が違うの?…と小声でレトは囁く。
隠れたザイの目元からは、涙が一向に途切れる気配は無い。
何もかもが悲しそうで涙に塗れたザイの、理由の分からない切ないしゃくり声が、息を吐く度に、レト…レト…レト…と、息子の名前を繰り返した。
「………わ……私、は…………お前…の…ち…父親…で…ある…資格、も…無いっ……無いんだ……!………本と…う…に……わ、たしは………お前、に……謝らな、け、れば………ならな…い…んだ……」
レトの頭に置かれていた父の手は、息子の短い青銀髪を撫で………そっと、だがしっかりと、片手のみでレトを抱きしめた。
そして。
半ば叫ぶ様に。
ザイは、泣いた。
「………あの…時…っ……!………アシュ…から、赤子…の………お前を………託された…あの…っ…あの、時……!………わ、私は…私…は…私は…………お前…をっ………………………………………捨てよう…と…したんだ………!」
あの寒い夜。
あの時。
あの一瞬。
私は、彼女と赤子を、秤にかけたのだ。
私は、彼女を失いたくなかった。
私の中の勝手な、醜いエゴで出来た天秤は、アシュに傾いた。
彼女を、救いたい。
だから、彼女が嫌がろうとも、拒まれようとも。
彼女を、助けようとした。
託された赤子を、あの火の海に。
放って、しまおうと。
赤子など。
彼女を救うためならば。
たとえ私の子供であろうとも。
私の、子供など。
「―――…………………私は…私、は…っ……私は………最…悪………な…人間なん…だ………!………私は………お前も……殺そうと……………した…んだ……!…私は、お前の…父、で…あると………言う……資格、は…無いっ………!……父親、では……ないんだ………」
隠れたザイの目元からは、涙が一向に途切れる気配は無い。
何もかもが悲しそうで涙に塗れたザイの、理由の分からない切ないしゃくり声が、息を吐く度に、レト…レト…レト…と、息子の名前を繰り返した。
「………わ……私、は…………お前…の…ち…父親…で…ある…資格、も…無いっ……無いんだ……!………本と…う…に……わ、たしは………お前、に……謝らな、け、れば………ならな…い…んだ……」
レトの頭に置かれていた父の手は、息子の短い青銀髪を撫で………そっと、だがしっかりと、片手のみでレトを抱きしめた。
そして。
半ば叫ぶ様に。
ザイは、泣いた。
「………あの…時…っ……!………アシュ…から、赤子…の………お前を………託された…あの…っ…あの、時……!………わ、私は…私…は…私は…………お前…をっ………………………………………捨てよう…と…したんだ………!」
あの寒い夜。
あの時。
あの一瞬。
私は、彼女と赤子を、秤にかけたのだ。
私は、彼女を失いたくなかった。
私の中の勝手な、醜いエゴで出来た天秤は、アシュに傾いた。
彼女を、救いたい。
だから、彼女が嫌がろうとも、拒まれようとも。
彼女を、助けようとした。
託された赤子を、あの火の海に。
放って、しまおうと。
赤子など。
彼女を救うためならば。
たとえ私の子供であろうとも。
私の、子供など。
「―――…………………私は…私、は…っ……私は………最…悪………な…人間なん…だ………!………私は………お前も……殺そうと……………した…んだ……!…私は、お前の…父、で…あると………言う……資格、は…無いっ………!……父親、では……ないんだ………」


