亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

色んな感情が混ざり合って、自分でも訳が分からなくて、まるで横たわるザイを責めるかの様に、ユノは怒鳴り続けた。
溢れ出る涙を袖で拭っても、拭っても、涙は枯れる気配が無い。


「馬鹿!!馬鹿、馬鹿、馬鹿馬鹿!!……ザイの…っ…ザイの、馬鹿!!大馬鹿者!!……誰が…誰がいつ……し、死んで…死んでいいって…言ったんだい…!!…起きてよ!!…ねぇ…起きてって………言って…………………言ってる…のに…」

喚き続けて次第に息切れし始めたユノは…その場で膝を突き、大粒の涙を流して、泣いた。
うずくまるユノをサリッサが涙を堪えながらそっと抱きしめると、小さな手は縋り付いてきた。



気付けば吹雪は弱まり、シンシンと……大粒の綿雪が、舞い落りてきていた。

風の音色と、背後からはユノとサリッサの嗚咽が聞こえてくる。








それ以外は、静かだった。

二人のいる空間は、やけに、静かだった。


本当に。



























「―――…っ………とぅ…さん…父さ、ん…」



恐る恐る触れてみた父の大きな手は、驚く程冷たくて。…思わず、手を引いてしまった。

覚えのあるあのとても心地よい温もりは、微塵も感じられなかった。
でも、この冷たさは、知っている。覚えがある。よく、知っている。




狩った獣の、事切れる時の、死んでいく、生き物の。

生き物が、生き物でなくなる時の。

あの、冷たさと、同じ。














どうして?


どうして、同じなの?



どうして、こんなにも冷たいのだろう。

どうして、全然暖かくないのだろう。






ねぇ、父さん。


どうして。




どうしてかな。










…僕、分かんないよ。








全然、分かんない。

















分かりたくもない。