……夜明けを迎えてから数時間後。
陽光はいつの間にか、真横からではなく、真上から地表を照らしていた。
途切れ途切れの薄い雲が、濁り一つ無いスカイブルーの海を風に吹かれて流れていく。
…春の訪れ時は、気持ちのいいものだ。
こんな眩しい昼間でも、心地良い眠りに誘う魔力を秘めている。
………暖かい空気を吸って、そよ風を浴びて…………ゆっくりとしたいもの。
………なのだが。
そんな陽光の下で、そんな暇は無いとでも言うかの様に、やや苛立った…テンポの速い靴音が、綺麗に整えられた幅の広い道を通り過ぎて行く。
………そのあからさまに、機嫌の悪そうな後ろ姿を眺めながら、後ろに続く者達は溜め息を吐く。
「………………陛下………陛下…………………………ローアン様」
「…何だアレクセイ」
ローアンは振り返らずに低い声で答えた。アレクセイは何とかローアンの歩調についていく。
「………せっかく馬車を用意しておりましたのに……まさか国境から徒歩でお帰りになるとは……」
「……馬車はいらんと言っただろう。それに城はもうすぐそこだ」
「………………本来お乗りになる方の後ろを乗り物がついていくなど……稀に見ない光景ですぞ…」
…春の陽気を満喫しながらトボトボとついてくる馬車を振り返って、アレクセイは言った。
「………今私はなかなか苛々しているのだ。………馬車なんぞに乗ってみろ。中で剣を振り回すぞ。それでも乗れと言うなら乗ってやらんことも無いが、アレクセイ」
「良い天気ですな~」
アレクセイは実に爽やかな笑みで空を見上げた。


