『―――我々人間の扱う武器には様々な物があるが……その中でも厄介な道具…“空の魔石”を知っているかね、ザイロングよ。…これは、厄介だ。非常に厄介な代物だよ。………対魔術用としては、一番有効な道具だが…』
『使えば最後、制御が不可能です。石自身が満足するまで、魔力を吸い付くします。……石にもそれぞれ力の強いもの、弱いものとあり、強力な石に関しては使い手にも悪影響を及ぼす………言ってしまえば、諸刃の剣です』
『よろしい。……では、その魔石に対抗しうる術とは何なのか………お前は知っているか?』
『………石の特質に従い…魔力を吸わせ……効力を失ったところで破壊する……事、ですが…』
『そう、そうだが………我々狩人は、魔術とやらとは縁もゆかりも無い。…つまり、我々には魔石に対抗する術が無いという事だ。そのまま生気を吸われて死ぬか、逃亡をはかるか。どちらかしか道は無い』
『………』
『だが、ザイロング。ものは考えようだ。………吸わせる魔力が無くとも…魔力の代わりとなる、別の力を吸わせればいいとは、思わないかね?』
『………別、の?』
『そう、別のだ。…それはどんな魔術よりも、強大なものでありながら………誰しもが持つものだ。………………分からぬか、ザイロング』
『―――…命、さ。生きとし生けるもの全てが持つ、この世で最高の、そして唯一無二の……力の源だ…』
『……命…』
『―――生きようとする心は、なにものにも堪え難い程の力を持つ。だがな、ザイロングよ。………死のうとする心もまた……同等の、力を持つ』
生半可な死への覚悟では駄目なのだ。
諦めの末の死では駄目だ。
恐怖の末の死では、駄目だ。
お前ならば、どうする。
お前は、どうするかね。
ザイロングよ。


