剣を交える度に、明るい朱色の、蛍火に似た儚い明かりが散っては消える。
底の知れない男の体力に、緩まぬ馬鹿力。
何度も空を切る凄まじい男の独特な剣舞に立ち向かうザイの刃は、ぶつかり合う度に、刃零れとひびを生じさせていた。
対する男の扱う剣の方が、硬度が高く耐久性もあるようだ。ザイの剣ばかりがその身を削っていく始末だったが、いくら優れた剣といえども、強さは無限ではない。
少しずつ、本当に少しずつだが…男の剣にも、確かに刃零れが見えた。
たった数回、されど数回の馬鹿力による切り付けを受け止めた後、ザイの剣は早くも折れた。
折れてはまた、別の剣を引き抜く。
振りかざして、ぶつかり合って、火花を散らして。
そしてまた、刃が折れる。また、剣を抜く。
繰り返される単調な流れは、永遠に続くのではないかと思われる程だったが……流れは、不変ではない。
ザイの息も吐かせぬ攻撃が何度も繰り返される内に、男の大剣には、ひびが目立ち始めていた。
中央辺りに走る細いひびは、衝撃を与える度に深く、濃く、刻まれていく。
男の剣は長く、しかも速い。あまり間合いを詰めることが出来ないでいたが、もしあの剣が真っ二つに折れれば、幾分接近戦が楽になる。
男の、厄介な武器の破壊。ザイの狙いは、まずそこだ。
そこから、一気に。
金属の鈍い音が、鼓膜を叩く。
…また、折れた。
剣は消耗品だが、消耗速度が早過ぎる。使い物にならなくなった剣は最早何本目になるのか分からなかったが、そんなことはどうでもいい。
折られた直後、舞い散る金属の欠片の向こうから、凄まじい勢いの一閃が真一文字に流れてきた。
すれすれのところで、ザイはその場から大きく跳躍する。
目下で、あっという間に小さくなる男の姿。
次に襲ってくる一瞬の浮遊感が来る前に、ザイは宙で身を捻り……本の一瞬でニメートル強の長さに変化させた弓を、構えた。


