亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


しかしこんな極めて騒々しい中でも、微かに…本当に微かに聞こえるレトの指笛の音色を、ザイは聞き逃してなどいなかった。



親子を隔てる壁や門は高いけれど、今はお互いの顔さえも見えないけれど、あの大きな魔法陣の下に、同じ場所にいる。

息子の音色が聞こえる。それだけで、頑張れる。動くことが出来る。

レトも、あの小さな身体で、寂しさを抑えて頑張っているのだから。






(―――…ま……せき………“魔石”…だと?)


一文字一文字丁寧に送られてくるレトのメッセージを、ザイは聞き取っていた。
そこから導き出した魔石、という単語により、ザイはこの状況を生み出している元凶の正体を、憶測ではなくはっきりと理解した。


やはりあの石…魔石という代物だったのか。




魔石がどういうもので、どういう性質を持ち、どんな影響を与えるのか。…ザイも一知識としては、知っていた。

その破壊の仕方も、知っていた。


魔石を相手にする時、どうすべきか。
……近年ではあまり知られていないが、そういう戦術が、狩人の中でも一部だが…きちんと語り継がれている。


今よりも戦の多かった大昔の、生き延びてきた先人達からの教えだ。
戦術こそが、狩人の教えの中でも一番重要とされている。


同士を、家族を、己を守る術なのだから。




(………だが…)

魔石を破壊するには、魔石自体の力を弱めなければならない事が不可欠。魔石に魔力を腹一杯食わせる事が基本なのだが………どうやらあの石、相当貪欲らしい。

食っても食っても、食い足らないのか。満足しないのか。…石の力は弱まる気配が無い。













…そんじゃそこらの魔力よりも、もっと強力で、もっと大きな…“力”を食わせれば。

そうすれば、良い。

それは、何なのか。





















何、なのか。
















それも、ザイは、知っていた。