右手に付着した砂利を軽く掃いながら背後に振り返ったジンの視界には………あろうことか、横たわる犬の死骸の絨毯が広がっていた。
今の今までジンを喰らおうと走り、元気の良かった筈の彼等だったが、僅か数秒の間を置いてそれら全てが屍と化した。
ピクリとも動かない、まるで眠っているかの様なブロッディの群れ。切り傷一つ無ければ、一滴の出血も無い。
…だが、彼等を一瞬で死に至らしめたのは紛れも無くジンである。
彼は武器らしい武器は使っていない。
使用したのは、そう、ただの砂利だった。
(………腕は、鈍っていないか…)
手前に横たわるブロッディを見下ろしながら、ジンは自己評価を付けた。
よく見なければ全く分からないが、死骸と化したブロッディの眉間と胸部に、小さな小さな穴が二つある。本当に小さな、土砂の小石が入るくらいの穴。………解剖でもすれば分かるが、実はこの二つ穴は、それぞれ骨や肉を突き抜けて脳と心臓に真っ直ぐ伸びている。その終着点である二つの器官は勿論、銃弾で貫かれた様に破壊されている。
…ブロッディを仕留めたのは、ただの、細かな砂利だ。
ジンは犬の群れを避けながら、擦れ違い様に細かな砂利の小石に微かに“闇”を纏わせ、指で弾いていた。
一気に数粒の黒い小石がジンの指先から放たれ、それらは光速とも言える早さで音も無く……ブロッディの頭と心臓目掛けて飛ぶ。
小さな凶器はあっという間に致命的な箇所を貫いていたのだ。
適当に石を弾いている様にも見えるが、その狙いは全て的確。一寸の狂いも無く、一匹たりとも逃さず、そして即死させる。
…戦術に関しては元から暗殺術を心得ているジン。静かに、迅速に、それでいて的確に。
相手は群がるただの獣。これくらいは朝飯前なのだ。
無駄に動き回る派手な戦法は好まない。


