大地が、揺れている。
見るもの全てが上下左右に、小刻みに揺れている。
かろうじで立つことは出来るが、真っ直ぐ歩くのは難しい。
この広大な城全体が、揺れている。
加えて、狂った獣の雄叫びが、あちこちから響き渡ってくる。
城をぐるりと囲む、青く光る半透明な空気が、微かに瞬き始めた。
上空に浮かぶ巨大な魔法陣も、何故かピタリと動きを止めている。
「………本当にやんちゃな…問題児ですね…」
「………ノア…何が起きてるの?………どういうこと…?」
苦笑混じりに呟き、空を見上げるノアは…やれやれと言わんばかりに溜め息を吐いた。
「………ヨルンがここら一帯の私の魔力を、食い荒らしています。…故に……結界が、解けそうになっていますね…」
結界が解ければ、城の守りが無くなってしまう。一刻も早くそちらに手を回すべきなのだが、今現在一番必要なノアの魔力は、ゼオスの持つ貪欲な魔石に吸われ続けている。
ヨルンの思わぬ襲撃により、喰われるノアの魔力は倍になったのだ。
石に力をあげながら城の結界を構成し直すなど、並の魔力では足りない。
…ノアだからこその芸当であり、今はなんとか双方同時に応対しているが…笑みを浮かべるノアは心なしか、苦しげに見える。
「面倒なお仕事ばかりで、本当に………軽く千歳を越えた老体には堪えます、よ…!」
そう言ってノアが両腕を上げれば、空に浮かぶ巨大な魔法陣が再びゆっくりと回り始め、失っていた光を取り戻した。
…だが、この地響きと揺れは止まない。
加えて城の何処かでヨルンが暴れ回っているせいなのか、突風が混じり、吹雪は勢いを増した。
…この悪条件が重なってしまった状況を、どうにかしなければ。
………でも、考えたって何も出来ない。
ヨルンを止めるにも、魔石を破壊するにも、自分は、まだまだ弱すぎる。


