「とにかくザイとやらに、バリアン兵士さんを任せるしかありませんね。しかしながら…あの操り人形は疲れを知らない真の人形。体力の問題を考えると………戦闘が長く続けば続く程、不利ですね。危ないかもしれませ…」
…と、ノアが淡々と述べ終わる寸前に、その傍らを小さな白い影が風の様に通り過ぎた。
その勢いは止まらず、魔力と吹雪が吹き荒れる嵐の中に突っ込んで行く…かに思えた直後。
…背後からニュッ…と、これまた素早い動きで伸びた他者の二つの腕………ユノとドールの手が、疾走するレトの襟首を掴んだ。
そして二人の息の合った動きにより、レトは問答無用で引き戻された。
「…ちょっと…レト!!君、何考えているんだい!?今までの話ちゃんと聞いていたのかい!?ここから向こうには行けないって聞いただろう!?今の君の行動は自殺行為だよ!?」
「魔力の荒波を前に突っ走るなんて、あんた馬鹿よ馬鹿!!大馬鹿だわ!!あたしらが引き戻さなかったらあんた死んでたのよ!?」
ゼエゼエ…と、突飛なレトの行動に対し、ほとんど反射的に動いた二人は肩で息をしながら、地に尻を付いたままのレトに声を張り上げた。
当の怒られているレトはというと………半泣きだった。
「………だ……だって……父さんが…だって…………あ、危ないって…父さんが………父さんが………」
父の危機に居ても立ってもいられないらしい。
震える声を漏らしながらも弓を握り、懲りずに再び立ち上がってザイの元に行こうとするものだから、大変だ。
ユノとドールは「嫌だ、嫌だ、嫌だー…」と小声で喚くレトを背後や隣から押さえ付けた。


