渦巻く魔力のせいで、城の外に出ることが出来ない。
レト達は今、救いの無い篭城状態に陥っているのだ。
ゼオスの持つ空の魔石を破壊すれば、この城を襲う地震と嵐はおさまるらしいが………そのゼオスに近付けないならば、まず話にならない。
この危機的状況を脱出出来る可能性は、限られている。
…一つは、危険な賭けだが…空の魔石がノアの魔力を吸い取れる分だけ吸い取るのを、待つか。
そしてもう一つは………空の魔石の力が及んでいない城外から、ゼオスを倒して魔石を破壊するか。
…前者は、危険過ぎる。ノアが死ねば、城の守りが無くなってしまう。
より安全なのは後者だが………誰も、外に出られないのだ。城外からの攻撃など不可能だ。
遠距離からの攻撃に向いている弓ならば、この距離でも狙う事は出来るが…風が、強すぎる。届く前に上空へ舞い上がってしまうかもしれない。
「…じゃあ、何よ…。………このまま指をくわえて、あんたがくたばるまで見てろって言うの?………どうしろって言うのよ…!」
噛み付く勢いで悔しそうに怒鳴り散らすドール。
対しノアは…おお、怖い…と呟きながら何故か余裕たっぷりにケラケラと笑っている。
今一番、それも生命の危機を感じなければならないのは、このノアなのに。
「…喰らいたいのならば、喰らえばいい。………満足するまで腹に溜め込めば良いのですよ」
低い声音でそう呟くノアだったが。
…愛想の良い笑みが、意地の悪い笑みに豹変したのを、三人は見逃さなかった。
「………石ころ一つで、私を倒せるとでも…?…………ハハッ………実に、浅ましい……………………………………………嘗められたものですね…」
伊達に千年以上も、生きていませんよ。


