「…嫌だ。…僕も行くよ。部屋でじっとしているだなんて、もう嫌だからね」
「………でも…危ないよ?…外にはエコーもいるし……」
「…その時は………………また、君が守ってくれるだろう?…今までみたいにさ」
少し意地の悪い笑顔を浮かべて、胸を張ってそう断言してくるユノに…レトは、不器用な笑みを浮かべた。
「………うん。………………そうだね」
弱い自分が彼を守り抜く自信なんて、本当は全然無いけれど。
根拠も何も、無いけれど。
守り抜けるかどうかではない。
守り抜くのだ。
絶対に。
「………僕の後ろにいて。前には…出ないでね」
「…勿論」
二人は互いに手を握り締め合うと、小刻みに揺れる不安定な地面を同時に蹴った。
当初目指していた大広間は案外すぐ近くで、少し走っているとあっという間に広々とした空間に出た。
一旦足を止め、二人は問題の外へと続く、広間の奥に堂々とそびえる巨大な扉をじっと見詰めた。
堅く口を閉ざしているそれは、この揺れに呼応してガタガタと震えている。
大音響が鳴る度に、扉は外側から体当たりでもされているかの様に、激しく揺れ動く。
…とても大きくて頑丈な扉なのだ。これしきの揺れで開く事はないだろうが、このままの状態が続けばもしかしたら…という事も無くは無い。
…騒音に入れ混じって、エコーの甲高い悲鳴が聞こえた。
狂った様なそれはどれも悲痛な叫びで………一際大きな悲鳴が聞こえたかと思えば、瞬間…二人がじっと見詰めていた扉の両隣にあるステンドグラスの窓に、エコーの黒い血飛沫がべったりと付着した。
…強気な態度を見せながらも、ビクリと震えるユノをちらりと一瞥し、レトはそのまま扉との距離を詰めていった。


