―――…白の魔術。
各三大国の王だけが使えるという、国ごとに属性の異なる強力な魔術。
国王の座についたローアンも勿論、この白の魔術を使えるのだが……実際、まだ扱いきれていない。
武術ならばすぐに習得出来るのだが、魔術となると話は別だ。体力よりも精神力を削るそれは、習得は疎か、慣れるだけでも容易ではない。
今しがた使った白の魔術は、フェンネル王だけが扱える魔術だ。
三つある属性の内、バリアンは炎の属性、このデイファレトは氷の属性。
そしてフェンネル王、ローアンが扱うそれは……極めて攻撃的でも保守的でもない、『樹』という変わった属性である。
術を発動させるには全神経を駆使してでの集中は勿論の事。自分の身に潜む魔力はあまりにも強大で、気を抜けば暴走する危険があるため、コントロールせねばならないのだが……頼れるのは己の気力のみ。
しかも、術はちょっとした感情の起伏でも発動するため、常に平常を保っていなければならない。
…まるで、いつも爆弾を抱えている様で、気が気でない。
この強力な白の魔術を難無く扱いこなせていた、我が母や先代の王達を至極尊敬する…。
(………とにかく今は…急がねば…)
白の魔術によって三大世界樹アルテミスの場所を探しだし、そこまで森の木々に案内してもらう事に成功した今……一刻も早く、行かねばならない。
…目的地まで、少し距離があるらしい。地中深くに張り巡らされた木々の根が、そう答えてくれた。
早足で歩きながら、ローアンの身体は次第に闇を纏っていった。
“闇溶け”独特のぞくりとした冷たさを身体の芯から感じながら、ローアンは意識を漆黒の向こうへと沈ませた。


