「―――見付けた」
女の呟きにアオイが振り返った、その直後。
―――…不協和音は、勢いを増した。
「………うわっ…!?」
唐突に音量の増したそれに、ダンテは咄嗟に地面から耳を離し、素早く起き上がった。
小さな音色から始まった不可解な現象は、目に見えるものとなって三人の目の前に姿を表した。
立ち上がった金髪の女が中央にある視界の、その背景。
いつ見ても、何処から見ても、沈黙と不動を保ち続けていた氷の森。
視界の端をはみ出して永遠に広がる深い深い森が。
寡黙な森が。
死んだ、森が。
「………動い、て…」
今まで生きてきた中で、見たことも無い、一番不可解で、一番……信じ難い、光景だった。
凍てついた森の木々が、葉も何も纏わない裸の枝の群衆が………四方八方に身じろいでいるではないか。
隣り合う仲間の枝分かれした腕を互いに絡み合わせ、太い胴体の幹をよじり、腰を急な角度に曲げていった。
地中深くで眠っていた太い根っこも表に顔を出し、厚い多量の積雪を押し上げて地面を這っていく。
…それらはグネグネと奇妙な動きをし、呻き声を上げ、一仕切り舞い続けたかと思うと…。
………気が付けば、女の正面には…それまで無かった筈の、一本の“道”が出来上がっていた。
森の奥深くの闇に続く道は、人一人が通れるくらいの細いもの。
木々を伐採して作った人工的な道とは違い、それは隙間無く立ち並んでいた筈の樹木が自ら身体を曲げ、ご丁寧にも根を張り巡らせて足場を整えた…言わば、自然が彼女のために作り出した、道。


