亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


自分が何者なのか、自分一人が周りにどれ程の影響を与えているのか。重々、理解しているつもりだ。

だからこそ。








「…行かねば、ならん。……私も一応、戦士の端くれだ。…たまには信用してくれ、ジン」

「………」






アレクセイには内緒だ、と微笑んで自分に背中を向ける彼女に……ジンは、深々と頭を下げた。

最高の敬意を、込めて。ジンは頭を下げたまま、小さく口を開き…。













「―――御意。我がローアン陛下」


…呟くや否や、ジンの身体は足元から闇を纏い、その姿は跡形も無く、あっという間に消え失せた。




















三人の狩人が未だ警戒しながらこちらを睨み付けてくる中、そんな視線など気にも止めずにローアンは周囲を囲む凍てついた森林をぐるりと見回した。

青々とした葉も明るい花も無い、白一色に染まったそれらは自国の森と比べ、随分と殺風景で寂しく、まるで森自体が死んでいる様に見えた。

この国にも春があった頃は、きっと美しい森が広がっていただろうに。
冬将軍の栄光の時代真っ只中にある今は、暖かい春の息吹と命が芽吹く産声は無く、代わりにあるのは、肌を刺し涙を誘う冷たい風と雪。


まるで、と言わず、もうこの国の緑は死んでいるのではないか。











(………いや、息はある。…ただ…………眠っているだけだ)








いつ来るのか分からない春の訪れを待つ様に、ただ、眠っているのだ。
ローアンの耳には、その微かな寝息が聞こえてくる。



(………長老は、アルテミスと共にある…か…)

不意にローアンは、まるで永遠に広がっている様な凍てついた森の手前で、ゆっくりと屈み込んだ。