静かな烈火を潜ませた彼女の低い声音に、眼帯の男は少しの間を置いて、無言でアオイから離れた。 解放されると同時に、アオイは直ぐさま後退する。
…掴まれていた喉元にじわりと痛みが走り続けている。確認は出来ないが、赤い手形がくっきりと残っているに違いない。
眼帯の男は突如真っ黒な靄に全身を包まれたかと思うと、目の前で消え失せた。
……しかしその直後には、彼の姿はいつの間にやら金髪の女の背後にあった。
………もう、訳が分からない。
マナは、始終茫然と佇んでいたダンテを掻っ攫う様に素早く女の前から離し、喉を押さえて咳込むアオイの元に集った。
「…申し訳無い…腕の立つ護衛なのだが、少々暴れ馬な性格でな……」
そう言って金髪の女は苦笑を浮かべ、どうやら護衛らしい眼帯の男の肩口を軽く小突いた。
…反省しているのかいないのか、詫びをいれてくる彼女とは違い、男は直立不動でそっぽを向いている。
まるで一陣の風の様に、吹き付けては一気に消え失せた殺気。
得体の知れないこの二人組からは、既に戦意など感じられなかったが、アオイ達は警戒しっ放しだった。
血を見なかっただけでも奇跡的に思える。
縄張りに入って来た侵入者を前にしたまま微動だにしない三人に、金髪の女は改めて向き直る。
「………お前達狩人に、尋ねたい事がある」
「……………それがそちらの国の…人にものを尋ねる態度なのか?……偉そうにしやがって…」
忌ま忌ましい、というアオイのぼやきに眼帯の男がピクリと反応したが、華奢な女の肘打ちが彼の腹部に入った。
「…失敬。この口調は昔から故、なかなか直らないのでな。……大目に見て頂きたい」
「………あたしら狩人なんかに、何を聞きたいっていうのさ…」


