…違和感。
目に見えるものではない。…第六感でしか分からない、感覚の塊。
それが何なのかは分からないが、三人の狩人の本能はこの異様な感覚に警鐘を鳴らしていた。
気配はある。だがしかし、その明確な位置などが掴めない。故に、番えた矢の放つ方向を定める事が出来ない。
………不可解なのは、向こう側からの気配に殺気らしい殺気が全く感じられない事だ。
…ただ、見られている。
目に見えない何かは、自分達をじっと凝視しているだけで、何の反応も見せてこない。
迂闊に動くのは危険だ。だが、このまま立ち往生も如何なものか…。
とにかく周囲に目を光らせるしかないこの状況下でアオイは痺れを切らしたのか、少し苛立ちを孕んだ彼の低い声音が背後から聞こえてきた。
「………いるんだろ?…隠れていないで堂々と出て来たらどうだ?………そちらさんが得体の知れない化け物なら仕方ないが……言葉の通じる人間なら、分かるだろ…」
…相手にしているのは、果たして人間か。だが、全神経を酷使しなければ気付くことさえ難しい…こんな気配の消し方など、まず同じ人間に出来るのだろうか。
その正体が獣なら獣で、それは厄介であることには変わりないが。
不機嫌なアオイの声が、さして強くない吹雪に掻き消えてから………………それから、数秒経った時だ。
不意に、薄暗い森の奥から………吹雪とは質の異なる冷たい風が吹き渡ってきた。
頬を撫でるそれは優しく、穏やかで、しかし冷水に浸かった様なぞくりとした冷たさで。
―――…瞬間、ダンテは我が目を疑った。
視界の先の、その奥に潜んでいた森の闇の一部が………まるで黒煙の様に揺らめきながら、ゆらりと前へ、ゆっくりと…出て来たのだ。


