亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



…何か、とても大切なものを失ってしまった様な気がしたが、ダンテは奇声を張り上げてこの話題を無理矢理終わらせた。

背後では、将来が不安だのもう取り返しがつかないだの何だのと真剣に話し合う二人がいたが、もはや無視だ。



実に下らない事で一気にむしゃくしゃしてしまったこの苛立ちを少しでも晴らすべく、ダンテは大股でズカズカと歩き、二人と距離を取る。
目前に広がる深い森の向こうの、そのまた闇に目をやりながら、いっその事、行方をくらまして非行に走ってしまおうか…とさえ思う。


見上げた山々の奥地から、止まない遠吠えが聞こえる。



災いとやらで狂った獣は、いつ山から下りてくるのだろうか。


夜の帳が落ちてくるのと同時に、彼等の飢えは地上に向くのだろうか。












そんなささやかな疑問が、ふと頭を過ぎる。



夜になれば、この凍てついた森から数え切れないくらいの獣が走り出でてくるのだろうか。

昼間と雖も薄暗い、静寂漂う森の姿を、ダンテは何気なく眺めていた。























―――…途端、ダンテの両手は、半ば無意識で弓を構えていた。

研ぎ澄まされた狩人の反射神経が、咄嗟にダンテの身体に臨戦体勢を命じ、五感を働かせ、その瞳に凄まじい殺気を宿らせた。




弓を構え、既に氷の矢を番えているダンテの後方には、同じく戦闘体勢に入る二人の狩人の姿。
アオイは剣を抜き、マナは弓を構えていた。







あっという間に“狩人”と化した三人の、もはや逃げられない鋭い殺気が集中する先は………何も語らぬ、広大な無言の森。


足音も、息遣いも、何も聞こえない。一見、何も無い様に見えるその景色の中に………狩人程の繊細な感覚を持つ者にしか分からない、違和感が、そこにはあった。