亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


今から本の数分前、ダンテとマナ、そしてアオイの三人の前に、武装した数人の不審な男達が現れ、問答無用で切り掛かって来たのだ。

異端者は見付け次第殺せ、という長老からの『虫殺し』の命が出されていた事もあり、ダンテとマナは直ぐさま応戦すべく弓を握ったが…全部任せろ、とアオイが志願してきたため、戦闘は彼一人の手で終わった。

アオイは変わり者でヘラヘラしているが、見掛けによらずそれなりに強い。
実力はザイ程ではないが、彼一人に戦闘を委ねる事に関しては二人とも異論は無かった。



そして案の定、彼は無傷で帰ってきた。時間は十分も経っていない。
マントや剣に目立つ赤は、全て他人のものだ。


「……そういえばちょっと前までバリアンの兵隊さんをよく見掛けていたけど…最近はめっきり減ったんじゃない?だいぶ殺し尽くしたかしら?」

ふと浮かんだ素朴な疑問にマナは首を傾げる。実際、今日までに相当な数のバリアン兵士をこの母子はその手で殺めている。
今回の様に向こうからの襲撃もあれば、こちらからの襲撃もあった。


ちょっと前から行動を共にしているアオイに関しては知らないが、この男もさぞや多くの異端者を手に掛けているに違いない。



「そうだな…狩人総員で『虫殺し』をしてるからな……逆に生き残っているバリアン兵士の方が少ないんじゃないか?その辺の谷底覗いて見ろよ、死体の山だぜ…」

「獣に餌をやっているようなものね…。でも今は異端者の問題よりも………むしろ獣の方の様ね…」

「………………“災い”…か…」


何処からか、飢えに狂った様なおどろおどろしい遠吠えが上がった。
マナとアオイは、揃って辺りに目をやる。






「………アオイ、あんたはどう思う?…何が、起きるのか…」