亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



朝から晩まで。背筋を伸ばして微動だにせず見張りを続ける兵士達のせいか、常に厳かな空気が漂っているバリアンの城内。
しかしそれも今朝ばかりは違う様で、長い廊下のあちこちを人が忙しなく駆けていく様は、何処か慌ただしい。

それも、その筈。


今日は賊討伐に向け、早朝から砂漠に小規模だが軍隊を送り込んでいる。
いつもの軍事訓練とは異なり、武装も厚く、兵士の誰もが殺気を醸し出していた。

それに今日は、あの老王が閉じこもっていた部屋から半ば無理矢理出され、久々に謁見の間に顔を出していた。
賊討伐は配下の者達の手だけでも充分足りているが、総指令くらいはやはり国王がせねばならない。


陰欝な表情で嫌々ながら杖を突き、玉座に腰掛ける老王の疲れ顔を見ていると、どうしようもなく情けなく思えて仕方なかった。



兵士達が落胆する中、何等気にも止めずに討伐の指揮を進めるケインツェルは、老王に謁見する前に自室で兵士からの報告を受けていた。



洋皮紙に羽根ペンを走らせながらも、意識は傍らの兵士に向けられる。



「…で、現在状況はどうかね?」

「…はっ。サラマンダー偵察部からの報告です。……現在、軍隊はエデ砂漠中央付近にて基本配置を変えずに待機しております。敵との接触はまだ見られませんが、反国家組織の赤槍と思われる武装集団がエデ砂漠に進行しているとのことです」

「………あ、そう。…配置の変更は無し、進行、後退も無しでそのまま待っていようかねぇ。…せっかくあちらも走って来てくれていることですしねぇ。………それと………赤槍だけ、でしょうか?」

「はっ。…武装集団の規模や、特徴からして……赤槍だけの様です。白槍、黒槍の姿は確認出来ておりません」