亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「……まだ…まだ、ドールが死んだとは決まっちゃいねぇだろうが!!…あいつはまだ生きているかもしれない!………あいつが帰ってきた時…誰が支えてやるんだ………お前等の馬鹿な真似を知って泣くのは、お前等の長なんだぞ!!」


ドールは、まだ幼い。もし戻って来た時…彼女は何を思うだろうか。責任感の強い彼女のことだ。………きっと、自分を責めるだろう。
自分のせいであると、影で泣くだろう。



ロキの叫び声にはどうか分かってくれと懇願を込められていたが……再度こちらを向いた男の顔には………苦笑の様な、嘲笑いの様な…何とも言えない微笑が浮かんでいた。

「………じゃあ…何だって言うんだ?……てめぇの陳腐な言葉が、俺達の怒りを残らず全部消化してくれるっていうのか?………お断りだ、ロキ」



バジリスクの走りが、加速した。
鋭利な爪が覗く強靭な四肢が多量の砂を掻き分け、四方八方に散布していく。 低い呻き声が砂中から聞こえた。


「………バリアンの戦士には、そんな甘ったれた考えは無いのさ。何とでも言え………てめぇには一生………分からねぇよ」


…言い切るや否や、男の手は突然手綱を放し………背に抱えていた槍の柄を掴んだ。
途端に強張るロキの表情に、威圧感のある冷めた視線が注がれる。




「………見逃せとは言わねぇ。…だが、邪魔をするなら………俺は、見境い無ぇつもりだ…!」

「………っ…!?」


濃い砂埃に塗れた視界。
眼球が映す見え辛い世界から、何処からともなく……現れた金属の鈍い光沢が、妖しく煌めいた。

動きの速い、輪郭も曖昧な長い槍の切っ先がロキに向かって突っ込んでくる。
腹部に向けられたそれは素早いものだったが、対するロキの反応はそれ以上のものだった。