「…お前等…やっている事の意味が…分かってるのか…!………奴等の思う壷だろうが!!」
―――ゴウッ…と、前方から吹き付ける砂を孕んだ熱風が、熱と殺意を撒き散らす群衆を飲み込んだ。
悪戯な風がマントの裾を叩き、先頭を進む男のフードを摘んでめくり上げた。
…途端、陽光の下に露わになった男の眼光が、ロキを射抜いた。
赤褐色の肌に映える黄金の瞳に、烈火が見えた。
「―――…ごちゃごちゃと、うるさいんだよ…若僧が…!………てめぇは自分の部下の心配をしてろ…」
ようやく反応らしい反応を見せたかと思えば、投げ付けられたのはドスの利いた低い声音。
仮にもロキは、反国家組織、三槍の長として高い地位にある人間である。
組織内で上司には敬語を使え、などという決まりは無いが……男のそれは長に対する態度としてはあまりにも不適切である。
当然ながらロキは顔をしかめたが、構うものかと男は目を逸らす。
砂塗れの節くれだった手が、乱暴にフードを被り直し、手綱に移った。
「…黒槍は、帰れ。…これは………俺達赤槍の事だ……俺達の、戦だ。………お前にも、白槍にも、そしてオルディオにも…関係無ぇ…」
「何言って…!!」
「関係無ぇんだよ!!……もう…関係無い。……赤槍は、ただの赤槍として…三槍を抜ける。………余計なお荷物が無くなって清々しただろ…」
…男は、大長と、長のドールの右腕として戦ってきた人間だった。
大長が捕らえられてからは、相棒のハイネと共にドールをよく支えていた。
リーダー格で、頭のよくきれる、優れた戦士だ。
常に先の事を考え、正しい方向へと導いていく………そんな男が、今は…憎しみに支配されている。
死を、覚悟している。


