一際大きなそのバジリスクに並ぶと、ロキはフードを外して大声を張り上げた。
「―――止めろって言ってんだろうが!!…馬鹿な真似はよせ!!…おいっ!!」
ロキの声は、砂埃に塗れてそのまま後方へと流れていく。
聞こえ辛いだろうが、この声が届いているのは確かだ。…フードに隠れた鋭い男の目が一瞬だけ、ロキを一瞥した。
「言うことを聞け!!……城の手前に広がるエデ砂漠に、武装した多勢の兵士が待ち構えている……お前らの動きはお見通しなんだよ………このまま行くと…正面からぶち当たるぞ!!」
情報は、白槍の長であるレヴィからのものだった。
全く連絡の取れない赤槍達を捜すべく、白昼堂々お尋ね者の顔を晒しながらバジリスクを走らせた二人。
辿り着いた赤槍達の隠れ家は、武器も無ければ人一人いない…ものけの空だった。
それが何を意味するのか。
………仇討ちだ。赤槍は、彼等の大長、そして長の仇討ちをしようとしている。…いや、既にそれは始まっているのだ。
奇妙な光景を目の当たりにしながら、嫌な予感がする…と呟くレヴィは、一旦別行動をとった。
ロキはそのまま行方をくらました赤槍達の捜索へ。レヴィは………単独で城付近の偵察へと向かった。
………そして早朝に届いた報せが、この事実である。
王族からすれば、こうなることは予想の範囲内…赤槍の動きなどまるでお見通しだったのだ。
大胆不敵に見えて巧妙な、人間の心理を突いた罠。
そう、これは罠だ。
罠だったのだ。
王族の…否、あの陰険眼鏡…ケインツェルの………醜い罠。
あの不敵な笑みが、頭を過ぎる。
ああ、胸糞悪い。


