亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



赤い砂漠の海。

砂漠越えに挑む勇気ある旅人か、砂喰いという魔獣などの類いか、もしくは物言わぬ白骨の影しかちらつかない砂の大地。


…だがしかし、今日という今日の、日の下。

生気の無い死に満ち溢れたその海は、大地を疾走する影と、それに伴って舞い上がる砂埃に荒れていた。



砂漠を駆け抜けていくのは、何十もの影。
時折地上に顔を覗かせながら砂を掻き分けて行くのは、固い岩肌を纏った巨大な獣だった。

ここバリアンに棲息する、最も巨大で獰猛な獣、バジリスクの…群れ。
群れでは無く単体で生きるこの獣の習性を考えれば、この光景は到底有り得ないものだったが…。



それら巨体の背には、手綱を引く人間の姿があった。



マントを羽織り、日差しを避けるフードと口元から首辺りまでを覆うマスクを身につけている彼等の手には、陽光を弾き返す鋭利な剣や槍。

フードから覗く彼等の眼光は、何を映しても、瞬きを繰り返しても、その秘めた凄まじい殺気は消える気配が無かった。





バジリスクに乗った武装集団は、ただ真っ直ぐ、脇目も振らずに、狂った様に砂漠を突き進んでいく。



一つの固い意志を胸に抱き、無我夢中で風を切っていく彼等は、この声が聞こえているのかいないのか。




暴走する仲間達の後ろに付き、懸命に「止まれ」と叫んでいた一人の青年…黒槍の長であるロキは、舌打ちをするや否や乗っているバジリスクに、手綱の絶妙な強弱のある引きで合図を出した。

ロキのバジリスクだけが直進から斜めに方向を変え、前方を走る集団の真横に回り込む。
そのまま前へ出ると、集団の先頭を泳いでいるバジリスクに近寄った。



先頭をきるバジリスクに立っていたのは、赤槍の旗を掲げる一人の男。