「………アシュメリア…………お前は…」
「…っ………うるさいって言ってるじゃ…」
「お前は…!………………確かに、私の子では、ない…」
アシュの言葉を遮った伯爵の声は、先程とは打って変わって何処か弱々しく、儚げだった。
高過ぎるプライドを全身に纏っていた普段の彼とは思えないその声に、アシュは口ごもった。
一歩、一歩。
…また、一歩。
火傷の跡が見える片足を引きずる様な、覚束ない足取りで…伯爵は、父は歩み寄ってくる。
…何故だろうか。
あんなに近寄りたくなかった、離れたくて仕方なかった筈なのに。
……アシュの身体は、ピクリとも動かない。
煤で汚れたボロボロの父を、拒もうとしない自分がいる。
父の手が、アシュに伸びる。
未だ数メートルの距離を置いたままだが、彼の手は、目の前にあるように感じた。
「………お前の言う通り………私とお前は…血など、繋がっていない。…元は、赤の他人でしかない。………………だがな、アシュ。……それでもお前は…私の娘なんだ。………大事な、娘なんだ」
「………」
貴族の夫婦は裕福だったが、子供を授かることはなかった。
そんな夫婦の元に養子としてやって来た小さな幼子。
当然の如く、夫婦の行き場の無い愛情はその幼子に注がれた。
血が繋がっていないだとか、生まれ持った身分の違いが有りすぎるだとか、他人は非難してきたが。
夫婦は、聞く耳を持たなかった。
養子だということさえも最初から無かったかの様に、夫婦は幼子を愛した。まるで、実の子供の様に。
………まるで?
……いや、違う。この子は、アシュメリアは。
………私達の子だ。
大事な大事な、私達の。


