巨大な、真っ白な建造物。
この陽光をものともせず、神々しい存在感を主張するそれは………。
―――………城。
……果てしない真っ赤な砂漠の世界で、歴史を抱えたそれは、たった一つだけ。
自らの力を象徴する純白のそれに、敬意を示すものは周りに何も無く。
………一つだけ。
権力を誇る国の象徴は、その孤独に気付かず、ただただ………大き過ぎる存在感で威張り散らしている。
「…………孤城………か………」
その寂しげな全容を見下ろしていたウルガは顔を背け、エンの脇腹を軽く蹴った。
瞬間、羽に纏わりつく炎がより大きくなり、エンの飛行速度が増した。
………ウルガは仕える孤城を後に、何処を見ても景色の変わらない砂漠の遥か彼方へと飛んだ。
………大国バリアンの城が、小さくなっていった。
「―――………な…なな………何じゃと……!」
ウルガが去ってから直ぐに、その城内の奥から、何かを叩いた様なけたたましい音と、しわがれた叫びが響き渡った。
大理石の床には、何度も叩き付けられて歪な装飾となってしまった杖が転がっていた。
何人もの寡黙な兵士達が壁に沿って仁王立ちする、美しい広大な部屋。
その奥に、偉大なる真っ赤な玉座があった。
そこに腰掛けているのは…………珠の様な汗を額に浮かべた老人。


