亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




普段から長い、長過ぎると思っていた階段に、ようやく終わりが見えてきた。

四階、三階…と過ぎ、二階に着いた時には、アシュはほとんど小走りで降りていた。
階段はもう飽き飽きだ。平面な廊下が恋しい。出口が待ち遠しい。

寒いけれど、外の冷たい空気を、胸いっぱいに吸いたい。





ああ、早く。早く外へ。

柵を振り切って、外の世界へ。




自然と、アシュの顔には微笑が浮かんでいた。
口元がにやけているのが自分でもよく分かる。






視界の下半分に、一階の広間が映った。
その先に佇む屋敷の大きな厳つい扉はまだ見えないが、もう少し降りれば見える筈だ。


(あと少し。あと……あと…)


逸る気持ちを抑え、口元の笑みはそのままに、アシュはまた一段階段を降りる。

一段。



一段。








広大な広間が、眼前に広がっていく。
少し離れた先に、扉が見えた。









階段も、あと十段も無い。
再度片足を降ろそうと、暗い足元に目をやった。















一段。








一………段……。























―――…不意に、アシュの爪先は次の段へと降り立つ寸前で………ピタリと、制止した。



…同時に、高揚していた気持ちは一気に冷めていく。

高鳴る心臓が一瞬止まったかの様な錯覚を覚えた。









アシュの表情には、笑みなど無かった。






大きく見開かれた彼女の瞳は、小刻みに揺れ、困惑を纏い…そして。






























「―――………お…………父……様…?」
















視線の、先。見下ろす先。

階段の一段目。

















短剣を握って腰を下ろしている、父の姿を映していた。