亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~








気付けば、窓の外から光は消えていた。
いつの間にか日は暮れ、いつの間にか夜は更けていた。
年期の入った古時計の、金色に光る針が、時の経過を物語っている。



明かりも点していない真っ暗な、静かな室内。
ひんやりと冷たい闇に塗れた中で、アシュはマントを羽織った。








一秒、一分、一時間。



僅かな時間でも、過ぎていくごとにアシュの胸は高鳴った。
空が暗くなればなるほど気分が高揚していった。
せっかく辛い現実から逃げられる睡眠でも悪夢しか見られなかった夜が、今日は待ち遠しくって仕方なかった。



(………本当の…自由が…)

今宵、彼は何処に現れるだろうか。…何でも有限実行の彼の事だ。障害があろうとも無理矢理自分に会いに来るだろう。だが、いくら寝静まった夜更けといえども屋敷に入るのは危険だ。

こちらから外に出るのが無難だろう。

脱走を防ぐために部屋は外側から厳重に鍵がかけられていたが、こちらは幼い頃から脱走の常習犯である。
御令嬢といって嘗めてはいけない。


屋敷内の人間が睡眠に入ると同時に、既にアシュは小さな針金を使って易々と扉の鍵を開けていた。



あとは身支度をして、外に出て、彼を…待つだけで…。

















(………一緒に…連れて行ってくれるかしら…)







彼は、何と言うだろう。

…出来れば、連れて行ってほしい。
置いて行かないでほしい。




………また…あたしの前から消えないでほしい。


彼が……ザイが何と言おうと、絶対について行く。拒まれようとも、絶対に。

自分の本当の居場所は、ここではないのだから。

………本当の、居場所は。







(………………彼が、いる所…)