街を出る事が決まると、次の新しい家はどんな家だろうか、少しは住みやすいだろうかとか…下らない考えばかりが浮かんでくる。
………ああ、もう、駄目なのか。
もう、逃げられないのか。
彼の言葉を携えた真っ白な鳥が降り立ったのは、そんな途方に暮れていた、矢先だった。
ああ、彼は…あたしを忘れてなどいなかった。
あたしが、悲しい時。籠の中で外の世界に憧れを抱いている時。
自由を求める時。
泣きたくて、仕方ない時。
彼は、あたしの手を引いてくれる。
彼は、一番望むものをくれる。
彼は、涙を拭ってくれる。
彼は、何者なのだろう。
あたしにとっては、神様みたいな人。
あたしの神様。
あたしを救ってくれる。
一番、好きな。
大好きな人。
大好きな。大好きな。
愛しい。
「………名前、付けてもらおうね。…絶対…絶対、素敵な名前だから。………………………ザイ…」
光を求めるかの様に、アシュはまだ明るい外を眺める。
愛しい人の名を呟き、愛しい我が子に笑みを向ける。
ただ、夢中で。
それ故に、アシュは。
聞き耳をたてる部屋の外の存在に、気付かなかった。


