一見、何の変哲もない短い木の枝。
それをグッと握り直すと……。
………枝がぼんやりと青く光だし、まるで意志を持ったかの様に枝の両端が真直ぐ伸びていった。
シュルシュル…と静かに、両端の細い先端部分は枝分かれしては絡み付き…次第に長く、形を変えていく。
………伸び切るところまで伸びたそれは、約二メートル弱の、両端が奇妙に曲がった青い棒。
―――弓だ。
……やけに長くて、握り部分が中央より下の…奇妙な弓。
弦である細い銀糸が両端の先端から先端へ伸び、ピンと張り詰めているが………肝心の矢が無い。
そんなことお構いなしに、それを握ったまま………レトは………………その場でわざと音を立てた。
……直後、一秒足らずで陥没する足元。
崩れる地面に巻き込まれる直前、レトは軽く後退していた。
目の前に現れた、収縮を繰り返す、牙の並んだ不気味な丸い口。
そこから覗く、既に穴の開いた舌に向かって、レトは思い切り剣を突き立てた。
………グヂュッ…という生々しい音。
レトの剣はその舌を、分厚い下顎をも貫き、切っ先は固い地盤にまで達した。
…まるで標本の様に剣一本でその場に固定されてしまった蟲。
もがけばもがく程傷口は広がり、顎を刺した剣は思う様に抜けない。
レトは突き立てた剣の柄に足を掛け、蟲の真上に大きく跳躍した。
―――…目下の蟲に向かって、宙に舞いながらレトは………その長い弓を構えた。
弓は垂直に構え、左手で握り部分を軽く掴んで……。
細い弦に親指を引っ掛けて……大きく、半円を描く様に引っ張った。


