「………本当………………よく眠る赤ちゃんねぇ…」
アシュが見下ろす真っ白な寝台には、静かに寝息を立てる小さな命があった。
…小さな、小さな。
その愛らしい寝顔を見るだけで、胸の奥に温かな何か滲んでくる。
産着に包まれた身体は、生きようと懸命に息をしている。
時折一回りも二回りも小さな手がもぞもぞと動き、指先でつっついてみれば、ギュッと握ってくる。
それが無意識であると分かっていても、愛おしさは湧き上がるばかりでもう仕方ない。
ふっくらとした柔らかな白い頬に触れ、産毛同然のまだ生えきれていない青みがかった銀色の髪を撫で下ろす。
………どうやら、起こしてしまったらしい。
直後、閉じられていた瞼がゆっくりと開き、紺色の綺麗な瞳がアシュの笑顔を映した。
汚れなど知らない、透き通った無垢な瞳。
赤い小さな唇が微かに動き、何か言いたげに、小さく開いた。
「―――…ぁー…」
「………まだ、寝てなさい。…………………………早く名前が欲しいわよねー………………あたしの…赤ちゃん…」
…彼女は今、独りではないのだから。
小さな命は、世間に隠れてひっそりと………また、眠りにつく。
心地よい温かな手に触れられ、まどろむ意識を捨てて、夢を見る。
この世に生まれて、まだ一ヶ月かそこらの命。
元気な、男の子。
今のところ、父親は婚約者であると偽っている。
まだ、名前は無い。


