亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


名だたる情報屋のコムからすれば、依頼人のプライベート情報の入手など朝飯前だ。
どのような手を使って得ているかは、全くもって不明である。

情報屋は謎だらけの人間ばかりだ。 おまけに他人を見下しているような態度を取るため、非常に人付き合いが悪い。

このコムも勿論例外ではなく、自分の専門分野についてあれやこれやと喋ることは無いのだが………アオイやザイに対しては、親しみの情を向けてくれている。

「………わしの店は案内所とは違うぞ。……で、どんな依頼じゃ?」

何だかんだ愚痴を零しても、結局は耳を貸してくれるらしい。
身体ごとアオイに向き直り、さあ話せと言わんばかりに顎を引いて促してきた。

「確か、一昨日に出たばかりのだったかな………依頼主の護衛をする…って内容でさ。少し離れた街から街への移動をする間の、ただの護衛なんだが……その報酬額が、やけに高いんだよ。…たかが貴族一人の護衛だぜ?普通の護衛とは桁が違うんだ」

郡を抜いて浮き上がった依頼は、人間一人の護衛とは思えない額。
恐らく、理由はその守るべき依頼人自身にある。余程敵の多い人間なのか、死んでもらっては困る重役の貴族なのか、それとも単に重度の怖がりなのか…何なのか。
釈然としない様子で頬杖を突くアオイに、何だそんなことか、と老人は肩を落とした。

アオイが期待していた通り、どうやらコムはやはり頼れるコムだったらしい。

「……その依頼人なら、有名人じゃよ。貴族は貴族だが、それも名ばかり。わしの調べが正しければ……あれは、闇商人じゃ。危ない商売…主に密輸入に手を染めている男でな。………商売柄、敵さんの多い人間で、常に行方をくらましておる。……今回は、自分の屋敷に帰ってくるらしい」