亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



……剣の鈍い光沢をちらつかせれば、蟲は興奮して呻き声を上げる。




「―――……………………おいで」




剣を構えたまま、挑発の様に囁くと、蟲は奇声を発し、その場で勢いよく深い雪の中に潜り込んだ。



ガリガリガリ……と、地面を削って地中の底へと進んでいく音が振動と共に鳴り響き、足元から消えていった。









………。















………………聞こえるのは吹雪の歌声のみ。

蟲の掘り進む音はおろか、気配さえもしない。





(………)


不意を突いてくるつもりなのだろう。

正面からか。背後からか。はたまた崖の断面からか。




「………」

身構えた状態で辺りに目を凝らし…………一瞬、片足の位置をずらした。
















―――その直後、レトはその場から大きく跳び下がった。


同時に、たった今いた場所が、一瞬で陥没した。

亀裂の走った丸い隙間から、蟲の大きく開いた口が飛び出し、雪と土砂を飲み込んだ。





「………やっぱり真下…か…」

ありきたりだな、とか思いながら、レトは間合いをとった。

蟲はそのまま、再び地中に潜っていく。

…足元から感じていた小さな地震は、すぐにまた止んでしまった。



………蟲は音や振動に敏感な様だ。
雪を踏む音にさえ反応する。



(………………一撃で……狩ろう…)


音を立てない様に両足の位置はそのままで、レトは右手でマントの内を探る。



……スッと取り出したのは……。











…………手の平に収まる位の、青い木の枝だった。


…剣の柄よりも薄く、レトの小さな手でも握り易い位の太さだ。