この雪国の木々は、枝を伸ばす事も無ければ、枯れ果てる事もない。
春という、今では幻の如き季節が健在していた頃の、遠い過去にあったその姿のまま……樹木は氷の棺に包まれて、終わりの見えない眠りについている。
眠る森は、時の経過を語ってはくれない。
森の中にいると、時が止まっている様な奇妙な感覚に襲われる。
自然と共にある狩人にとって、どんなに長くどんなに短い時間も、全て変わらない一時に思える。
何秒、何分、何時間、何日、何年………時に支配されていない狩人には、そんなものは無用だった。
どれくらい経ったのか。
何日過ぎたのか。
永遠に繰り返される昼と夜の交差は、これで何度目か。
指を折って数える事など、生まれてから死ぬまで一度たりとも経験することはないだろう。
そう、思っていたのに。
今は流れゆく時そのものが、何故か、忌まわしい。
「―――分からんよ。………お前という奴が…」
苦笑混じりのしわがれた声が、ぼんやりと虚空をさ迷っていた意識を、不意に呼び止めた。
ちらりと横目で声の主を見遣れば、お気に入りのパイプをくわえながら丁寧に金銭を数える老人の姿。
その口元には嘲笑にも見える意地悪い笑みが浮かんでおり、窪みに収まった眼球の放つ怪しげな光も、実に楽しげに笑っていた。
老人から視線を反らし、やれやれと言わんばかりに肩を竦めて見せる。
「今更………いつもの事だろう、コム」
「……ああ、いつもの事さ。じゃが、前にも増して、お前が分からんよ…」
顔をしかめるザイに対し、カカカ、とコムは乾いた笑い声を上げる。


