亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~











夜明け前の、仄暗い白銀の大地。
ひしめく葉の無い凍てついた森の中には、山脈の如く立ち並ぶ岩山がそこかしこに孤立している。

そこら一帯の崖沿い辺りは、木々はあまり生えていないためか、獣はよりつかない。
旅人などは一夜を過ごす際、外敵のいないこの様な場所を選ぶ。
焚火の跡など、以前まで人がいた形跡を見付ける事がある。






だから、目の前に広がる森を切り開いた様な崖沿いの一帯に、幾つもの足跡や炭化した枝があっても不思議ではなかった。








ただ、異様なのは。











この、思わず顔をしかめてしまう凄まじい異臭と、血と肉片だらけの地獄絵図の様な光景…だけ。







「―――…何っだよ…………これは…」

呆然と眺めながら佇むアオイは、もはや乾いた苦笑しか漏れなかった。












アオイが見詰める先は、赤一色の…何とも奇妙な風景だった。こんな光景は、こんなにもグロテスクの真骨頂を極めた光景を見るのは……狩人に生まれて、初めてかもしれない。


真っ白だった筈の地面は、血を染み込んだ真っ赤な雪で覆われていた。
広範囲にまで、元人間だったものの生々しい残骸が散らばっている。胴体、四肢、頭がバラバラで、どれがどの身体なのか全く分からなかった。
岩壁にはべっとりと血飛沫が付着し、そのまま凍っている。

少なくとも、五十人以上の屍がそこら中にあった。



狩人である以上、死体の一つや二つは幼い頃に嫌でも見ているし、実際にこの手で幾つも死体を作ってきている。
残忍な屍くらい見慣れているつもりだったが…。

(………………俺も…まだまだ甘いって、ことか……)

吐き気こそ催さなかったものの、ずっと直視は無理だ。…見るに堪えない。