亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

















ザイは、呆然と立ちすくむアシュの前に、佇んでいた。
















デイファレトの民特有の白い肌。

短い灰色の髪。

身に纏う白と黒を貴重とした狩人の衣服。

腰のベルトに挟まれたたくさんのナイフ。

右手に握り締めた大きな剣。

肩に背負った青く長い弓。

相変わらずの、無表情。












そんな、彼。














…その場に立つ、無表情のザイは。

























全部、真っ赤だった。

鮮やかな、赤で、染まっていた。
真っ白な世界に、一点だけ。映える、赤。




剣先や、髪の先、弓の端からは、赤い雫が白いキャンパスに滴り落ちていた。







血の雨にでも打たれたのか、と思う程………ザイは、血塗れだった。









他人の鮮血で、染まっていた。






















「………………ザ…イ…」





ようやく絞り出した声が震えている事に、アシュは気が付いた。
こちらを凝視したまま、ピクリとも動かないザイに、ゆっくりと歩み寄る。



「………ザイ………………………………どう…したの…?………何処に…行って…」






目の前にまで来ると、見上げた先の彼の顔が、よく見えた。

血だらけの、顔。
血で濡れて垂れ下がった髪には、肉片の様な…何かよく分からないものも付着していた。


「………ザイ…ねぇ…答えてよ……貴方………どう…して…」

















虚ろな瞳はアシュを映すばかりで、何も語ってくれない。
固く結ばれた唇は動く気配も無い。



…ただただ困惑するアシュは、震える手を、彼の顔にそっと伸ばした。