ただ本能のまま、単純で単調な動きを繰り返す。
誰しもが獣に返る行為がもたらすのは、ただの…上辺だけの快感。
しかしその支配力は凄まじいもので、身体も意識も自分の全てが何処かに持っていかれそうになる。
いっそのこと、全部手放してしまえばいいのかもしれない。だが、寸前で自分の何かが歯止めをかけるのだ。
完全に熱にのまれぬまま、何処か冷めたザイの目は、自分の下で乱れていく彼女を映し続ける。
暗がりでも淡い輪郭を保つ白い肌はしっとりと濡れていて、吸い付いてくる。
掠れ声の入れ混じった湿った吐息は、耳を犯す。
頼りなく空を掴む華奢な腕が、ぎこちなく絡んでくる。
それだけ、なのに。
どうして…こうも。
「………っ……っ……っザ、イ……ふっ…ん…………嫌っ………せっかく…せっ…かくっ…………ぁ……好きに…なった、のに………離れるなんて嫌っ……もう、お別れ、なんてっ…………あっ…」
真っ直ぐに自分を見詰めてくるアシュの瞳は、純粋に綺麗だと思った。
同時に、胸が苦しくなった。
彼女の声が、姿が、こんなに自分を苦しめる。
苦痛と呼ぶ程ではない、じんわりと浸透する…もどかしい痛み。
この姿を、彼女は好きでも無い他の男にも、赤の他人にもさらけ出すのだろうか。
…不意に脳裏を過ぎった考えは、胸の痛みを倍増させた。
自分でも醜いと感じる、未だかつて体験したことのないどす黒い何かが……自分の中で渦巻く。
…彼女は、私が好きだと言っているのに。
…今彼女を抱いているのは、私なのに。
…他の男に、奪われてしまうのか。


