亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~






私には、到底理解出来ない。

理解出来る日など、きっと訪れはしない。





…自分にがむしゃらにしがみついて泣いている彼女を見ていると、何故だか悲しくなった。
零れ落ちる涙の一滴一滴は焚火に照らされ、美しい赤い宝石にも見えた。




胸の辺りが、酷くざわめいていた。


弱々しい泣き声で名前を呼ばれる度に、そのざわつきは酷くなる。

静かな、自分の中の何かに…波紋が広がる。幾つも。幾つも、絶え間無く広がる。







私の知らない、好きという感情。

それを泣きながら私に向かって連呼する彼女を見下ろしていると………胸の辺りが締め付けられる様な感覚を覚えた。





…泣くな。泣かないでくれ。
苦しまないでくれ。

………………我が儘など、幾らでも聞いてやるから。
だから、泣くな。



お前が泣かないでくれるのならば。

お前が、望むのならば………私は。
















どうにもこうにも、苦しくて。
泣き止んでほしくて。
どうすればいいのだろう、と考える事も出来ず。



…ただ、彼女が望むのならば…。
それだけを思い、ザイは泣き続ける彼女に顔を近付けて。























震える小さな唇を、そっと、塞いだ。














涙の味がした。










湿った、柔らかなその感触から離れようとしたが、しがみついてきたか細い手に引かれて、離れられなかった。

















これは、彼女への憐れみなのだろうか。


彼女が可哀相に見えて、仕方なかったのだろうか。





唇を塞ぎ、啄み、華奢な身体を抱き寄せ、肌の香を胸一杯に吸い込み……。

…何処かから沸き上がってくるこの何かが、理解出来ない。