亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


……アシュはそのまま、頬を滑る節くれだった彼の手を取り、そっと両腕で抱き込んだ。
自分よりも背丈の高いザイの肩に寄り掛かり、静かに瞼を閉じる。

…ザイは、身体を預けた自分を振り払おうともしなければ、何も言わなかった。
代わりに、頭上から小さな苦笑が聞こえてきた。





………二人並ぶと、暖かい。少しくっつくだけで、もっと暖かい。…ずっとこうしていると、ずっと…暖かい。


…彼は……ザイは、こんな風に甘えるあたしを、子供みたいだとか思っているのかしら。
………………あたしは、違う。……あたしは。














「………………家に帰ったら……この夢も、覚めるのね。………自由を求めた、子供みたいな大冒険も………終わりなのね…」


瞼を開けば、真っ赤な焚火が瞳を照らした。
赤く、神々しく揺らめく明かり。

じっと見詰めていると、不思議とそれは歪んでいった。炎など最初から原形など無い、最初から歪んだものだが、奇妙な程揺らいでいく。

…同様に、回りの景色も段々といびつな輪郭を帯びていく。



何でだろう…と、ぼんやり考えてみて…分かった。

…ああ、目頭が熱い。


…ああ…何だ。あたし…ただ単に。























「……………め…目が…覚めるまでは………まだあたし…自由…なの…よね……?………い、今…あたし……自由で…いいの…よ…ね………ねぇ…」






泣いている、だけじゃない。





本当に………子供だわ。





















この夢の中で、唯一、本当に頼れるその存在に、アシュは泣き顔を埋めた。
彼の腕に絡めた両手に、弱々しく力を込める。