亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

そう言ってザイは、自分の隣に来いと…乾いた地面を軽くパシパシと叩いて見せる。
…なんだか、どこぞの父親みたいな台詞を吐いたな…と自分でも思っていると、向かい側に座る彼女の顔が一瞬で真っ赤に染まった。


高熱か…!?、と何処か抜けているザイは真顔で心配した。

何を迷い、どういう葛藤を繰り返しているのか…アシュはもじもじしながら赤面でぶつぶつ呟いている。

数秒の間を置いて、アシュは何故か落ち着かない様子で腰を上げた。
ちまちまと小さな歩幅でこちらに歩み寄り、何事も無かったかの様に指定した隣に座り込む。



………案の定、沈黙が続いた。








人間二人の至近距離は、やはり一人の時よりも断然暖かく感じた。
変わるものだな…と、ザイは一人頷き、一人で感心する。
隣にいるアシュも、身体の震えは治まってきた様だ。

…足は痛い様だが。






「…少しは暖まってきたか?」

「………………ええ。………………でも物凄く心臓に悪いわ…」

「………心臓に…悪い?」

カッ、と目を見開いて何故だ!?、と大真面目に尋ねれば、聞くなと怒鳴られた。平手打ちも無く頬が痛む事は無かったが、今は耳が痛い。







「………あ、貴方…ずるいのよ!………人の気も知らないで……………あ、違う。…わ……分かってて………そういう事言うんだから…」

天然と鈍感の組み合わせなんて最強タッグじゃないの、と漏らすアシュの顔からは、なかなか熱が引かない。



赤らんで、ふて腐れている彼女を見下ろしながら、少女の様で素直に可愛いと思う。




…同時に、羨ましくも思えた。











…昼間の、彼女の言葉が頭を過ぎる。




あの、初めて向けられた感情。

未だに理解出来ない感情。