亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




















自分以外の、他の存在というのが、正直…苦手だった。


言葉を持たない木や風、雪等の自然、獣を相手にしている方が、落ち着く。
心穏やかだ。胸中の水面は鏡の様になめらかな平面を保っている。





…しかし、一度他の人間の存在が近寄って来れば………水面は、波紋で覆い尽くされる。

…心が、揺れる。

それは酷く不愉快極まりない、何とも言えない気持ちの悪さを沸き立たせる。



他人が、苦手だ。



話し掛けられるのも、名を呼ばれるのも、触れられるのも。
なんとか慣れても、顔をしかめるもう一人の自分が何処かにいる。









苦手、なんだ。



多分自分は…周りや自分が思っている程、強くないのだ。







臆病なんだ。


日の下に出ることさえ出来ない…臆病者なのだ。


他人が、恐いのだ。





















だから。



















生まれて初めて向けられた、理解しがたい他人の感情にも………私は驚きよりも、恐怖を覚えた。














知らない感情。知らない言葉。

今まで生きてきた人生の経験から見ても、それは理解出来ないもので。






















………“好き”とは、何なのだ。


“愛する”とは、何なのだ。

















私は、分からない。


どうすればいいのか、分からない。







私は、怖い。


怖いのだ。




















アシュメリア。

私はお前が………恐ろしくて、仕方ない。