二人は、東へ。
当ても無く、とにかく東の方角へと進む。
アシュのいた街の姿など、当の昔に吹雪の向こうに見えなくなっていた。
このままずっと東へ行けば、隣国フェンネルとの国境に近付く。
国境近くは獰猛な獣が巣くう険しい山岳地帯となっているため、街など全く無い。
引き返すしかないのだが………地理など分からないアシュには現在地は疎か………これからまた自分の街へ連れていかれるなど、当たり前だが…分かっていない。
…彼女の切実な願いと思いは、この十数日間でよく分かった。
…罪悪感が、渦巻いている。
また、彼女にあの街の姿を見せなければならないことに………胸が痛む。
裏切りたくはない。
だが。
致し方、ない。
「―――…何考えてるの?……恐い顔しちゃって…」
昼下がり、くらいだろうか。
相変わらず頭上の空は厚雪雲で占拠されているが、僅かに漏れ出る陽光を搾り取っている外はぼんやりと明るく、薄暗い。
昨日から外の様子を窺ってじっとしていたが、激しい吹雪は朝になっても止んでいなかった。
吹雪など構いやしないが…今は自分一人ではない。アシュもいるのだ。この天候は、彼女には少々辛い。
「………恐いか?」
「子供が見たら泣くわ。…隠したって無駄よ。そういう顔して黙っている時は、たいてい何か気難しい事を考えてる時でしょう?………ずっと一緒にいるんだもの。嫌でも分かってくるわ」
…そういうものなのだろうか。
雪と風から逃れるように、岩壁の深い窪みに身を潜める二人。雪で壁を作れば、人間二人でも充分な空間を生み出すなど容易い。


