亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



誰ひとり自分の事を知らない未踏の地なら何処でもいいが…正直、何処に向かっているかぐらいは知りたい。

ここ数日間、何を目指しているのか知らないがとにかく歩きっぱなしだ。
深い森の中であるため、風景も特に変わらない。感覚が麻痺して同じ所をぐるぐる回っている様にさえ思えてくる。


…そんな何気ないアシュの問いだったが………当のザイは…何故か無言だった。
返事をしない彼にむっとしたアシュが再度口を開いた瞬間、ゴウッ…と、一陣の冷たい突風が森を横切り、二人を飲み込んで駆けて行った。


…弱々しく降りてきていた雪の群れが、途端に宙で踊り狂いだす。







「………吹雪いてきたな。…少し急ぐが、歩けるか?」

「…ええ。………多分」

「…そうか。………無理はするな」



一気に激しくなる雪空からして、今夜は猛吹雪に違いない。白く染まっていく視界の中、もはや見慣れてしまったザイの大きな手が差し延べられる。

アシュは極自然に、その手に己の頼りない手を差し出した。

躊躇いは、当の昔に消え失せていた。
………この手が無ければ、自分は何も出来ないから。



















やけに激しいその吹雪は、それから数日間、昼夜休む事なく吹き続けた。




























奇妙な日常は、既に十日を越していた。

………体力の無い、外の世界に慣れていない街の民であるアシュ。
過酷な環境だ。すぐに弱音を吐くかと思っていたのだが、やはり彼女はかなり図太い神経の持ち主の様だ。
弱音どころか、元気よく世間への悪態を吐いている。
自由への執着は予想以上に大きいと見た。


…ザイは、そんな彼女の強者っぷりに半ば感心さえする。